ヘラクレスオオカブトを飼う前に、ヘラクレスオオカブトのことを知っておこう。
ヘラクレスオオカブト 学名 Dynastes hercules
産地 南米各地(亜種によって住んでるところがちがう)
体長 最大180mmとも言われている。亜種によって大きさがちがう。
寿命 幼虫期間 1年〜2年(大きなオスほど幼虫期間が長くなる傾向にある)
成虫 うまく飼って1年ぐらい(交尾をすると寿命が短くなる)
一口にヘラクレスオオカブトといっても色々な亜種がいるぞ
まず、原名亜種のヘラクレス・ヘラクレス(hercules)通称ヘラヘラ、ムシキングでおなじみのリッキー(lichyi)とオキシデンタリス(occidentalis)、他にエクアトリアヌス(ecuatorianus)、モリシマイ(morishimai)、トリニダーデンシス(trinidadensis)、セプテントリオナリス(septentrionalis)、レイディ(reidi)、ブリュゼニ(bleuzeni)、パスコアリ(paschoali)、タカクワイ(takakuwai)、それから、トゥクストラエンシス(tuxutlaensis)、今のところこの12種類 (バウドリーていうのもいるけど、これはレイディに含まれる)
この中で一番大きく迫力があるのはヘラクレス・ヘラクレス、リッキーも長さ的には負けないくらい大きくなるけど胸角が細く少しきゃしゃな印象。レイディとトゥクストラエンシスはあまり大きくならない。
基本的な形はみんな一緒。見分けるには、胸角(上の角)の突起の位置と頭角(下の角)の形や突起で判断するものが多い。
今、飼育人口が多いのはやっぱりヘラヘラかな。その次にリッキーてとこだと思う。昆虫館や昆虫展の標本なんかはリッキーが多いね。
羽の色は、黄色からオリーブグリーン。湿度が高かったり、おなかがいっぱいの時は黒くなっているよ。乾いてくるとまた黄色くなってくる。
ムシキングにリッキーブルーてのがいるけど、あれはリッキーの羽がブルーになっている個体。とても珍しい。ヘラヘラでも珍しいがそれ以上にリッキーは珍しい大珍品。
しかし、実は羽に紫外線をあてて羽をブルーに変えてしまう(実は色が抜けてブルーにみえる)恐ろしい裏技がある。見破る方法もちゃんとあるけど、オークションの写真なんかだとわかりにくいから絶対にだまされないように。実際は、ちゃんと人工ブルーていって出品してることが多いけどね。
左の個体が羽が黄色いタイプ、右の個体がオリーブグリーンタイプ
もっと水色の個体や白っぽい個体もいるが、超珍品
右の個体でもブルータイプと呼ばれることが多い
もちろん裏技は使ってないよ
右の画像はヘラクレス・ヘラクレスとリッキーの角の写真
左がヘラクレス・ヘラクレス、右がリッキー
胸角の突起はどっちも頭角の突起より先端寄り
リッキーの頭角の先はカギ状その手前の突起もでかくてヘラ状
手前の頭角突起は、ヘラクレス・ヘラクレスで普通2・3本
リッキーは普通1本、たまに無いのもいる
その他各亜種の詳しいことはここでは省くけど、昆虫雑誌ビークワ18号ヘラクレス特集に詳しくのってるよ。でもこの本もう完売してて出版社にも在庫がないらしい。
ちなみにサタンやネプチューン、グラントシロカブトなんかは、ヘラクレスにとっても近い仲間。みんなDynastes属なんだ。
前置きはこれくらいにして、それでは早速ヘラクレスを飼ってみよう。
まず、ヘラクレスを購入するときのポイント
亜種名や産地は当然のこと、羽化日まではっきりしている個体を選ぼう。羽化日がはっきりしていると、寿命も大体だけどわかるよね。何月何日まででなくても、何月上旬とかそれぐらいでも十分。
というわけで初めは、羽化日がはっきりせずいつ死ぬかわからない天然物(ワイルドともいう)よりも、羽化日がはっきりしてるブリード物がおすすめ。
それから、足がすべて爪の先までちゃんとついていてちゃんと動くこと。たまに足が麻痺してうまく動かない個体もいるからよく見てみよう。特にオスは前足(交尾するときにメスをホールドするため)、メスは後ろ足(産卵する時に使用するため)
大きさは?
大きな個体や胸角の太い個体は値段が高い。お財布と相談して決めよう。
110mmぐらいあれば、十分ヘラクレスのかっこいい形をしてるよ。
ヘラクレスを購入したら、次は飼育用品だ
まずは飼育ケース
オスで中ケース、メスで小ケースがあれば十分(繁殖をさせないなら別々に飼うこと)
オス同士一緒のケースで飼うのは絶対やめよう。けんかをして早死にのもと。
左から大ケース(W370×D220×H240)
中ケース(W300×D195×H205)
小ケース(W230×D155×H170)
他に特大(W410×D260×H290)や
ミニ(W180×D110×H130)もある。
次にマット
ホームセンターとかで売ってる昆虫マット(一番安いので十分、または製材所とかのおが屑でもいい)を少し湿らせて、ケースにオスで2・3センチぐらい、メスで4・5センチぐらい入れて、転倒防止に止まり木や樹皮を入れてオッケー
完成
最後にエサ
の前に、その成虫はエサを食べてるかな?
かぶと虫の仲間は成虫になってからも、休眠期間というのがあって、土にもぐったまま(本当は蛹室の中)でじっとしている。期間は種類によってちがうけど、ヘラクレスの仲間はだいたい3ヶ月ぐらい。エサを食べ始めることを後食と言うよ。後食がはじまる目安はケース内をゴソゴソ歩き回ったり夜なんかに飛ぼうとしたりしだすから、そうなったら試しにエサを入れてみよう。
羽化日がはっきりしてれば、後食のタイミングも大体の目安がつくよね。
エサは昆虫ゼリーなんだけど、飼育するだけなら一番安いので十分。繁殖するなら少し値段は高いが高タンパクゼリーをあげよう。バナナもとてもいいエサだけど、小バエがおそろしく湧くぞ。それから、ホームセンターで昆虫ゼリーを買っている人は、冬になるとまったく売ってなくなるから、買いだめしておかないとエサ切れをおこすぞ。(最近は多少売っているらしい)
エサはこれらで十分、間違ってもスイカやキュウリ、砂糖水はあげないように。おなかをこわして早死にのもと。気をつけよう。
オスのゼリーは、65グラムていう一番大きなゼリーがいい(角が邪魔で小さいゼリーだと全部食べられない)。なければ小さいゼリーを大きなえさ皿にうつしかえてあげよう。
メスは小さいので十分。一日一個ぐらいペロリと食べるぞ。すぐなくなるからといって大きな65グラムゼリーを入れると、中身をこぼしまくってマットをすぐべちょべちょにしてしまうからかえって無駄。
左から、65グラム、30グラム、16グラム
ゼリーは、カッターナイフとかで十字に切れ目を入れるだけで十分。上のフィルムをむく必要はないよ。むいたら中身をこぼされるだけ。
これで準備オッケー
さあヘラクレスを入れよう。
日常管理で一番気をつけるのは温度。特に夏の暑さ。かぶと虫は夏の虫だから暑いのへっちゃらと思っている人がとても多い。でも実際はとても苦手。だいたい20度から25度ぐらいが好み。高くても30度は超えないようにしよう。30度以上が続くとすぐに弱るよ。夏の車内なんかもってのほか。1分で死んでしまうぞ。これは国産カブトでも同じだよ。
ちょっとまって!国産カブトなんか真夏の暑いときにその辺にいるし、外国産なんて赤道直下の熱帯地方の国にいるんじゃないの?
実は、彼らは昼間、少しでも涼しい葉っぱの裏や土の中にもぐって涼しくなる夜まで寝てるんだ。そして涼しくなった夜に活動をするってわけ。だから涼しい所では昼間でも樹液を吸ってたりするよね。国産カブトを18度とか20度くらいで飼うととっても長生きするよ。暑いと涼しい所に逃げようとして動き回って、体力を消耗して寿命が短くなってしまう。涼しいと動き回らないから体力を消耗せずに長生きするってわけ。
外国産でも一緒だよ。あと種類によっては、赤道直下でも実は標高の高い涼しい所に住んでいて、暑いのは大の苦手てやつもいるし。
冬はやっぱり多少保温が必要になってくる。最低15度ぐらいはほしい。常に部屋の中が暖かいなら最高だけど高熱費が...。
そこで、発泡スチロールにケースごと入れて出来るだけ室内の暖かい所に置いておくといい。暖かいときには発泡スチロールの蓋をあけておいて、暖房がきれて寒くなるときには蓋をしめて密閉しておけばいいよ。一晩ぐらい密閉してても窒息することないから大丈夫。
家庭用の簡易温室みたいなのがあると一番いいけど、普通はそんなの部屋に置ける訳ないし。
観葉植物なんかの簡易温室。
ヒーターとサーモスタットを使うと温度管理は容易い。
あとはマットが乾き過ぎないように、時々霧吹きでマットを湿らせよう。このとき虫にはかけないように注意しよう。
それからヘラクレスは、力がとても強いから蓋をきっちりしめておこう。蓋があまりきつくないようだったら、蓋の上に重しをのせておいたほうがいいよ。朝になって脱走してた、なんてことになったら大騒ぎになるぞ。
飼育はこれでもう大丈夫。それではかっこいいヘラクレスの飼育をおもいっきり楽しもう。
おっと忘れてた!ヘラクレスには、たまにお腹を上に向けてひっくり返った格好でじっとしている、という習性があるぞ。これはお腹を乾かしているんだけど、特に後食前によくみかける光景。はじめこれをみると死んでると思ってびっくりしてしまう。ヘラクレスを飼うとみんな1度は経験すると思うよ。
こんなかんじでひっくり返ってる。
一瞬あせるぞ。
飼育をしてると、次は子供を産まして増やしてみたいと思ってくる。
そこで次は、繁殖に挑戦だ!